「小鳥遊医局長の恋」 第1章 突然の始まり 4
暫くして、病棟師長から呼び出された。
「学会へ行ってみない?」
…学会?って医者の…ですよね。
「そう…実は小鳥遊先生がスピーカーをするんだけど、お手伝いを探してるの。有給消化になっちゃうけどあなた行ってくれない?」
…新人じゃ無理だし、あいにく私も行けないから。
「はい…わかりました…。」
…じゃあその日休みあげるから、それでシフト組むから宜しく。
小峠医師は相変わらずしつこかった…が医局長は約束通り?
さりげなく冬から小峠を引きはがしてくれた。
小峠とは違って、まるでポーカーフェイスの医局長。
その後は何事も無く、しかし毎日が忙しく過ぎて、
冬は、あれは夢だったのか?と本気で思うようにさえなった。
…夢でもちょっと得した気分♪
患者の検査だしの為、エレベーターに乗り込むと、
偶然、小鳥遊医局長が先に乗っていた。
「お疲れ様です…。」
私は挨拶をして乗り込んだ。
「ねえ冬ちゃん…うちの息子の嫁に来てよ。美人だし、しっかりしてるし、歳は少し上だけど…でも今の時代そんなのあんまり関係ねーだろ?」
姉さん女房ですか?と冬は笑った。
「面会に来た時にさ、冬ちゃんが可愛いくて一目ぼれしちゃったんだって。」
…可愛いって言われる年でも無いのだが。
「電話番号聞いといてって言われちゃったんだよね。」
「息子さんっておいくつでしたっけ?」
「今年で20歳になる。大学卒業したばかり。」
…姉さん女房…それもかなり上。
「あら…そうなんですか?かなりの姉さん女房になりますが…宜しいでしょうか?」
冬は笑った。小鳥遊はにこにこと冬達の会話を聞いていた。
エレベーターはゆっくりと降りていく。
「それに…私が息子さんの嫁になったら、タバコ吸うな、酒飲むな、油ものは控えて…とか煩い嫁になりますよ?」
「そんなことは判ってる…。」
「それに喫煙所で一緒になる外科患者の●●さんとあとほら…701号室の若いにーちゃんも冬ちゃん狙いだっていうからさ、俺は親として人肌脱いでやろうと思ってさ。」
「月性さんは人気があるんですね。」
小鳥遊は笑った。
「そーだよ。優しいし可愛いしさ。だから電話番号教えてくれよ。頼むよ。」
冬は少し考える振りをして、じゃあ息子さんに直接私に言って下されば、考えますとお伝え下さいと笑った。冬は患者に伝えても良いように捨てメールを持っている。余りしつこい患者には退院する時に、そのメアドを渡す。
「僕だって月性さんの電話番号知らないのに…ずるい。」
医局長が口を挟んだ。
「そりゃ小鳥遊先生は奥さん居るんだから駄目だろ?それなのに看護師に手ぇ出しちゃまずいでしょう。」
「うん…確かに。」
3人で笑った。
「あ…月性さんMRのオーダー出しておいたから、出来たら当直室に持っていて下さいね。」
と言って、医局長はエレベーターを降りて行った。
あ…そっか。今日当直か…。
「冬ちゃん…小鳥遊センセはカッコ良いけど、奥さん持ってるひとじゃぁ駄目だ。」
冬はそうですね駄目ですよねと言って笑った。
…どうやって先生と連絡とろう。
医者は院内携帯を持っているが、そこに電話したとしても、周りに医者が居るかも知れない。
そんな心配は無用だった、日勤終わりに
入院3件…。
「もう…マジで…信じられない。」
看護師たちは口々に文句を言った。
「なんで、師長さんはベット空いてるからって他科取っちゃうかなぁ。」
男性看護師が言った。
「しかもその後 脳外2件 ダブルでヘビーだし。マジで、月性さんも文句言った方が良いっすよ?」
他のチームの男性看護師が言った。
「きっと脳外だったら全身管理も得意だしとでも思ってんだよ。」
卒後3年目看護師が言った。
「私も手伝うから、目標20時!」
えええ…月性さん絶対そんなの無理だよ…。
「じゃあ…もしそれまでに終わらなかったら、今度ご飯おごっちゃう♪」
冬は笑った。心が荒むくらい忙しいこういう時こそ、遊び心が必要だ。
「マジで?今日日勤8人もいるっすよ?全員に奢ってくれるの?」
…あ…そんなに居たのか…
「飲みじゃないからね。ご飯ですよ?ご飯なら良いわよ♪」
「月性さんの奢りで、一緒に行ってくれるんだったらゆっくり仕事しよう」
「コラ…そんなの駄目」
冬は、若い子にも先輩達にもよく食事に誘われたが、習い事が多くてなかなか付き合えなかった。
皆にその理由も言わないので、彼氏とデートしているという噂になっている…面倒なので、否定せずにそのままにしていた。
小鳥遊医局長が病棟にあがってきた。
「みんな本当に…済まないね…。後でピザ頼むから許して…」
笑って言った。
「小鳥遊先生がそう言うなら私頑張る!」
若い子たちも一斉に張り切った。
他の医者は外来がまだ忙しいと言って病棟には上がってきていなかった。
「出てない指示や処方が合ったら、僕が出しますから言って~あと入院指示書くから…担当看護師さん誰~?」
小鳥遊は動きが早く無駄が無かった。こういう忙しい時には、そこに居るだけで、士気があがる。
流石若いのに医局長になっただけはある。新人二人が入院を取ったが、時間が掛かりそうなので、わかるところは全て手伝った。1時間後には看護計画を立てるだけの状態になった。
「うわぁ…凄い…まだ7時前だぁ。今日は小鳥遊先生が居てくれたし、月性さんにご飯奢ってもらえるし、沢山手伝って貰ったから早く終わったぁ~。後は看護計画だけだから楽勝。」
日勤と準夜勤者にピザが届いた。狭い休憩室で食べた。冬はさっさと食べ終え、二人分の看護計画を立てた。冬は後輩にダラダラ仕事をさせるのは好きじゃ無かった。新人がピザを食べ終わりナースステーションい戻って来る頃には患者2人分の看護計画も終わっていた。
「すげー流石 月性さん♪」
男性看護師が言った。
「月性さんーほんとに済みませぇん。」
新人2人が冬にお礼を言った。
「自分が指導する立場になったら、同じように新人を手伝ってあげてね。」
それに、ただ立ててあげたわけじゃ無いわよ?術後はどんな合併症があるのか、あなた達が考えるんですからね?あなたたちの担当患者にしたから、頑張ってね。」
冬は初めて新人に患者を持たせたいと思っていたが、入院から見ることが出来るし、丁度良いと思った。
「えーっ。どうしよう。大丈夫かなぁ。」
不安そうに顔を見合わせた新人。
「大丈夫じゃない時は先輩看護師にすぐ聞く。だって患者さんに迷惑が掛かってしまうでしょう?だから教えて貰ったことの裏付けをする為に家に帰ってから教科書を見るの。それで次回、同じような患者さんが来たら出来なかったところも少し出来るようになるかも知れないじゃない?」
…手伝ってあげるから大丈夫♪大丈夫♪
冬は優しい笑顔で新人達に言った。
さっ片付けをして一緒に帰りましょう~♪
小鳥遊はそれをじっと見つめていた。
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「学会へ行ってみない?」
…学会?って医者の…ですよね。
「そう…実は小鳥遊先生がスピーカーをするんだけど、お手伝いを探してるの。有給消化になっちゃうけどあなた行ってくれない?」
…新人じゃ無理だし、あいにく私も行けないから。
「はい…わかりました…。」
…じゃあその日休みあげるから、それでシフト組むから宜しく。
小峠医師は相変わらずしつこかった…が医局長は約束通り?
さりげなく冬から小峠を引きはがしてくれた。
小峠とは違って、まるでポーカーフェイスの医局長。
その後は何事も無く、しかし毎日が忙しく過ぎて、
冬は、あれは夢だったのか?と本気で思うようにさえなった。
…夢でもちょっと得した気分♪
患者の検査だしの為、エレベーターに乗り込むと、
偶然、小鳥遊医局長が先に乗っていた。
「お疲れ様です…。」
私は挨拶をして乗り込んだ。
「ねえ冬ちゃん…うちの息子の嫁に来てよ。美人だし、しっかりしてるし、歳は少し上だけど…でも今の時代そんなのあんまり関係ねーだろ?」
姉さん女房ですか?と冬は笑った。
「面会に来た時にさ、冬ちゃんが可愛いくて一目ぼれしちゃったんだって。」
…可愛いって言われる年でも無いのだが。
「電話番号聞いといてって言われちゃったんだよね。」
「息子さんっておいくつでしたっけ?」
「今年で20歳になる。大学卒業したばかり。」
…姉さん女房…それもかなり上。
「あら…そうなんですか?かなりの姉さん女房になりますが…宜しいでしょうか?」
冬は笑った。小鳥遊はにこにこと冬達の会話を聞いていた。
エレベーターはゆっくりと降りていく。
「それに…私が息子さんの嫁になったら、タバコ吸うな、酒飲むな、油ものは控えて…とか煩い嫁になりますよ?」
「そんなことは判ってる…。」
「それに喫煙所で一緒になる外科患者の●●さんとあとほら…701号室の若いにーちゃんも冬ちゃん狙いだっていうからさ、俺は親として人肌脱いでやろうと思ってさ。」
「月性さんは人気があるんですね。」
小鳥遊は笑った。
「そーだよ。優しいし可愛いしさ。だから電話番号教えてくれよ。頼むよ。」
冬は少し考える振りをして、じゃあ息子さんに直接私に言って下されば、考えますとお伝え下さいと笑った。冬は患者に伝えても良いように捨てメールを持っている。余りしつこい患者には退院する時に、そのメアドを渡す。
「僕だって月性さんの電話番号知らないのに…ずるい。」
医局長が口を挟んだ。
「そりゃ小鳥遊先生は奥さん居るんだから駄目だろ?それなのに看護師に手ぇ出しちゃまずいでしょう。」
「うん…確かに。」
3人で笑った。
「あ…月性さんMRのオーダー出しておいたから、出来たら当直室に持っていて下さいね。」
と言って、医局長はエレベーターを降りて行った。
あ…そっか。今日当直か…。
「冬ちゃん…小鳥遊センセはカッコ良いけど、奥さん持ってるひとじゃぁ駄目だ。」
冬はそうですね駄目ですよねと言って笑った。
…どうやって先生と連絡とろう。
医者は院内携帯を持っているが、そこに電話したとしても、周りに医者が居るかも知れない。
そんな心配は無用だった、日勤終わりに
入院3件…。
「もう…マジで…信じられない。」
看護師たちは口々に文句を言った。
「なんで、師長さんはベット空いてるからって他科取っちゃうかなぁ。」
男性看護師が言った。
「しかもその後 脳外2件 ダブルでヘビーだし。マジで、月性さんも文句言った方が良いっすよ?」
他のチームの男性看護師が言った。
「きっと脳外だったら全身管理も得意だしとでも思ってんだよ。」
卒後3年目看護師が言った。
「私も手伝うから、目標20時!」
えええ…月性さん絶対そんなの無理だよ…。
「じゃあ…もしそれまでに終わらなかったら、今度ご飯おごっちゃう♪」
冬は笑った。心が荒むくらい忙しいこういう時こそ、遊び心が必要だ。
「マジで?今日日勤8人もいるっすよ?全員に奢ってくれるの?」
…あ…そんなに居たのか…
「飲みじゃないからね。ご飯ですよ?ご飯なら良いわよ♪」
「月性さんの奢りで、一緒に行ってくれるんだったらゆっくり仕事しよう」
「コラ…そんなの駄目」
冬は、若い子にも先輩達にもよく食事に誘われたが、習い事が多くてなかなか付き合えなかった。
皆にその理由も言わないので、彼氏とデートしているという噂になっている…面倒なので、否定せずにそのままにしていた。
小鳥遊医局長が病棟にあがってきた。
「みんな本当に…済まないね…。後でピザ頼むから許して…」
笑って言った。
「小鳥遊先生がそう言うなら私頑張る!」
若い子たちも一斉に張り切った。
他の医者は外来がまだ忙しいと言って病棟には上がってきていなかった。
「出てない指示や処方が合ったら、僕が出しますから言って~あと入院指示書くから…担当看護師さん誰~?」
小鳥遊は動きが早く無駄が無かった。こういう忙しい時には、そこに居るだけで、士気があがる。
流石若いのに医局長になっただけはある。新人二人が入院を取ったが、時間が掛かりそうなので、わかるところは全て手伝った。1時間後には看護計画を立てるだけの状態になった。
「うわぁ…凄い…まだ7時前だぁ。今日は小鳥遊先生が居てくれたし、月性さんにご飯奢ってもらえるし、沢山手伝って貰ったから早く終わったぁ~。後は看護計画だけだから楽勝。」
日勤と準夜勤者にピザが届いた。狭い休憩室で食べた。冬はさっさと食べ終え、二人分の看護計画を立てた。冬は後輩にダラダラ仕事をさせるのは好きじゃ無かった。新人がピザを食べ終わりナースステーションい戻って来る頃には患者2人分の看護計画も終わっていた。
「すげー流石 月性さん♪」
男性看護師が言った。
「月性さんーほんとに済みませぇん。」
新人2人が冬にお礼を言った。
「自分が指導する立場になったら、同じように新人を手伝ってあげてね。」
それに、ただ立ててあげたわけじゃ無いわよ?術後はどんな合併症があるのか、あなた達が考えるんですからね?あなたたちの担当患者にしたから、頑張ってね。」
冬は初めて新人に患者を持たせたいと思っていたが、入院から見ることが出来るし、丁度良いと思った。
「えーっ。どうしよう。大丈夫かなぁ。」
不安そうに顔を見合わせた新人。
「大丈夫じゃない時は先輩看護師にすぐ聞く。だって患者さんに迷惑が掛かってしまうでしょう?だから教えて貰ったことの裏付けをする為に家に帰ってから教科書を見るの。それで次回、同じような患者さんが来たら出来なかったところも少し出来るようになるかも知れないじゃない?」
…手伝ってあげるから大丈夫♪大丈夫♪
冬は優しい笑顔で新人達に言った。
さっ片付けをして一緒に帰りましょう~♪
小鳥遊はそれをじっと見つめていた。
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「小鳥遊医局長の恋」 第1章 突然の始まり3
「いえ…別に良いんだけれど…そっか彼は…女癖が悪いって聞いたことがあったけれど、噂は本当だったんですね。」
小鳥遊はにこにこ笑った。冬はまさか本人の耳に入るとは思って居なかったので焦った。
真面目な冬に限って、ダンディ小鳥遊に変な目で見られそうで怖かった。
「じゃあ…これからは、小峠の前では仲が良い振りをしなくちゃね。」
小鳥遊は悪戯っ子のように笑った。
「いえ…そんなことまでして下さらなくても…。本当にすみませんでした。」
冬は深々と頭をさげた。
…やはりダンディ小鳥遊と言うべきでは無かった
…もっと禿とは関わりの少ない他科の医者にしときゃ良かった。
「僕は…相手が貴女だったら、とても嬉しいですね。光栄に思います♪」
小鳥遊は冬の顔をじっと見た。
「えっ?」
…どういう意味なのだろう…か。
小鳥遊言った言葉の真意を素早く探ったが、分からず戸惑った。
丁度良い具合にナースコールが鳴った。
「私が出まぁす!」
他の看護師がステーションへ戻って来る前に、
冬は、大きな声で言い、では失礼します。本当に申し訳ありませんでしたともう一度言い、
小鳥遊の前から去った。
夜勤者への送りも終わり、そろそろ帰ろうとしたところだった。
内線が鳴った。
「小鳥遊です…。申し訳無いんだけれど、患者の●●さんのMRIを当直室へ持ってきてくれる?緊急で出したから、もう出来上がってると思うんだよね。外来が今来てて手が離せないんだけど、急ぎで確認したいんだ。」
本当に済まないけれど…と付け加えた。
「判りました ●●さんですね。調べてお持ちします…。」
私は電話を切った。
「じゃあ…お疲れさま~。
医局長がMR見たいっていうから届けたらそのまま帰るから…。」
他の看護師にそう告げて、病棟を離れた。
丁度帰るところだったし、当直室は看護師の更衣室からも近かった。
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小鳥遊はにこにこ笑った。冬はまさか本人の耳に入るとは思って居なかったので焦った。
真面目な冬に限って、ダンディ小鳥遊に変な目で見られそうで怖かった。
「じゃあ…これからは、小峠の前では仲が良い振りをしなくちゃね。」
小鳥遊は悪戯っ子のように笑った。
「いえ…そんなことまでして下さらなくても…。本当にすみませんでした。」
冬は深々と頭をさげた。
…やはりダンディ小鳥遊と言うべきでは無かった
…もっと禿とは関わりの少ない他科の医者にしときゃ良かった。
「僕は…相手が貴女だったら、とても嬉しいですね。光栄に思います♪」
小鳥遊は冬の顔をじっと見た。
「えっ?」
…どういう意味なのだろう…か。
小鳥遊言った言葉の真意を素早く探ったが、分からず戸惑った。
丁度良い具合にナースコールが鳴った。
「私が出まぁす!」
他の看護師がステーションへ戻って来る前に、
冬は、大きな声で言い、では失礼します。本当に申し訳ありませんでしたともう一度言い、
小鳥遊の前から去った。
夜勤者への送りも終わり、そろそろ帰ろうとしたところだった。
内線が鳴った。
「小鳥遊です…。申し訳無いんだけれど、患者の●●さんのMRIを当直室へ持ってきてくれる?緊急で出したから、もう出来上がってると思うんだよね。外来が今来てて手が離せないんだけど、急ぎで確認したいんだ。」
本当に済まないけれど…と付け加えた。
「判りました ●●さんですね。調べてお持ちします…。」
私は電話を切った。
「じゃあ…お疲れさま~。
医局長がMR見たいっていうから届けたらそのまま帰るから…。」
他の看護師にそう告げて、病棟を離れた。
丁度帰るところだったし、当直室は看護師の更衣室からも近かった。
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